このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。
TOP > 夢のがん特効薬 腫瘍壊死因子 TNF-α
2017.5.21.
腫瘍壊死因子α型 TNF-α
名前を見れば、画期的な「がん免疫治療薬」
のように思えてしまいます。
この物質は、白血球などが放出するもので
樹状細胞なんかも、出すのですが
当初、名前の通りに腫瘍組織に壊死を起こさせることが
わかり、期待をこめて、このような名前が
つけられました。
他にも、TNF-β があります。
また、 腫瘍成長因子 TGF というのもあり
さらに、TGF-α TGF-β が知られています。
こうして、名前だけながめていると
TNFは、「いいもの」で、
TGFは、「悪いもの」に見えてしまいます。
実際に、名前がついただけの背景や事実はあり
名前の通りの機能を果たすことがみつかったのです。
たとえば、TGF-βをNK細胞に作用させると
NK細胞の活性が低下します。
では、TGF-βが、NK活性を低下させる
免疫抑制の正体か、というと、そう単純ではありません。
様々な物質が、免疫抑制に関与しており
TGF-βを封じる薬を開発すれば
がんが治る、とはいかないのです。
そして、実験を重ねるうちに意外な事実が
明らかになります。
同じ腫瘍細胞であっても、TNF-αの濃度を変えると
腫瘍成長因子として作用するのです。
こうなると、この物質は、どちらの側なのか
わからなくなりますが、実際に、生体内の物質は
その物質単独で、単純な意味をもつとは限りません。
夢の新薬、画期的ながん特効薬として脚光を浴びていた
TNF-αに、暗雲が漂い始めました。
じゃあ、濃度を調整すればいい、と考えられたのですが
いくらの濃度なら、腫瘍に壊死を起こさせるのかどうか
単純な答えはみつからなかったのです。
もし、これをがん免疫治療薬として、患者さんに投与するなら
それによって、腫瘍が壊死を起こすのか、増殖するのか
何も起こらないのか、腫瘍が複数ある場合、腫瘍ごとに
どちらかが起こるのか、やってみないとわからない
ということになったのです。
実用化の道筋が見えない中で、
決定的なダメージがありました。
がんの進行そのものによって
「最期」をもたらすもの。
それは、悪液質とか、アミドローシスと
呼ばれるものですが、体液がドロドロになり
水の循環が止まって、生命活動が止まってしまいます。
このドロドロの液体、アミロイドを大量につくらせる
誘導物質カケクチンの構造が決定され、それがまったく
TNF-αと同一物質であったことがわかりました。
この事実には、愕然としました。
こうして、TNF-αの開発は中止されます。
その後、TNF-αの生体内での挙動をコントロールできる
という方に会う機会がありましたが、十分、検証でき
なかったものですから、どうすればいいのか、ということは
ここでは書きません。
さて、樹状細胞は、「がん細胞に対する反応が鈍い」
という言い方をします。
「鈍い」ということは、少しは反応するのでしょうか。
樹状細胞は、TNF-α、β TGF-α、β
これらを放出します。
何も樹状細胞に限らないのですが。
なので、まったく、がんと関係ないわけでは
ありません。
樹状細胞には、がん細胞を認識するセンサーは
見当たりませんし、
NK細胞のように、多種多様なセンサーで、
がん細胞の表面を調べ、がん細胞を識別すれば
その場で、殺してしまう、という芸当はできませんが
がん細胞が反応する物質を放出することはできます。
樹状細胞は、血液の中にはいませんし、通常は
皮膚の奥や、消化管の基底膜付近など、感染症が
発生した場合、病原体が侵入してくる場所に
張り付いていますが、リンパ節などにも
よくいます。
そこで、TNFやTGFファミリーの物質を
放出することで、がん細胞の転移を誘導したり
あるいは、転移を抑制する働きがあると
いう説があります。
がん細胞は、必ず、リンパ節を経由して
リンパ管ルートで転移するとは限りませんが、
一応、ある場所で発生したら、どちらの方へ
転移しやすいという傾向があり、出発口の
リンパ節と、定着して転移巣をつくる出口の
リンパ節にいる樹状細胞が、これを誘導している
という説があります。
こうなると、樹状細胞もまた、どちら側なのか
よくわからなくなりますが、ともかく、
こうした物質を、目をつぶって体内に
投与しても、何が起こるかわからない
それだけ人体は複雑なんだ、ということです。